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わらび新聞

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地蔵の小径(復刊22号)

「モラルハザード」との言葉をご存知だろうか。倫理観の欠如である。企業が倒産したにもかかわらず、経営トップが責任を曖昧にし、居座り、高額の退職金を受け取るなどのケースだ。

日本の経済がここまで深刻な事態になったのは、何も銀行だけが指弾されることではないだろう。ところで民間企業があえいでいるいま、預金保護の名目で銀行に巨額の政府資金が投入され、銀行だけが救済されようとしている。しかしバブル期に浮利を追い、不良債権を残した元の経営陣が個人的に破産したという話は聞いたことがない。

ノーベル賞の田中さんの例を持ち出すまでもなく、日本には未来の可能性を秘めた技術が多く隠されている。ベンチャー企業の夢を殺してはなるまい。この際バブルに関わった銀行家が手許にある全財産を投げ出しベンチャー・ファンドを作ったらどうだろうか。返済を迫る融資ではなく、見返りを期待しない投資だ。

そうでもしなければ、国民の間に渦巻いている不満は解消できないだろう。まず不信感を払拭すべきだ。

 

地蔵の小径(復刊23号)

ことしのNHK大河ドラマは「宮本武蔵」。50歳にして兵法を完成させた武蔵が62歳の死の直前、精進潔斎して、遺言として書いたのが「五輪書」だ。武蔵はこの本の読み方を記している。

「此書に書き付けたる所、一言一言、一字一字にて思案すべし。・・・・・・此書付ばかりを見て、兵法の道には及ぶ事にあらず。此書に書き付けたるを・・・・・・見ると思わず習うと思わず、にせ物にせずして、即ち我が心より見出したる利にして、常にその身になって、よくよく工夫すべし」(水の巻)

簡単に言えば、本の内容を知識として習得するのでは駄目だ。また物まねでもいけない。自然に行動できるように自分自身が工夫して身につける事が肝心だ、とでも言おうか。今の教育を見ていると、知識を詰め込みさえすればいいと考えているようだ。

知識はそれだけでは役に立たない。それを行動をする設計に活用して初めて生きてくるのだ。360年前、武蔵がいみじくも指摘したことを、教育改革にあたる当事者はもう一度考えて欲しいと思う。

 

地蔵の小径(復刊24号)

今最大の懸念材料は米軍のイラク攻撃と北朝鮮の核開発に違いない。フセイン政府が実際に大量破壊兵器を装備しているのかどうか、北朝鮮が核開発に手を出そうとしているのか分からないが、何か米国の「思い込み」の要素があるとも思える。

先月に引き続き、宮本武蔵の「五輪書」火の巻。「敵になるということ」。意訳すると、「自分が敵になった立場になれ。人質を取って立て籠もるといったケースも、犯人が周囲の敵の方が強いと思うからだ。いわば進退窮まった状態だ。立て籠もるのがキジだとすれば、攻め入るのはタカだ。工夫が必要だ」

イラクの場合にしても、北朝鮮の場合にしても、米国は相手の立場に立って考えたことがあるのだろうか。追いつめるのに急で、逃げ道を残すとか、話し合いを続けるといった姿勢はないようだ。

戦いになったら、先頭要員ばかりでなく、一般の民衆がどれほど傷つくだろうか。すべての戦争の目的は「平和をもたらす」ためだった。平和のための平和が必要なのだ。

 

地蔵の小径(復刊25号)

日経に池宮彰一郎氏が連載した「平家」が終わった。清盛を腐敗しきった藤原氏への革命勢力ととらえた力作で、氏の最高傑作の一つに数えられよう。

最後の部分で、氏は後白河法皇にこういわせている。「官人・官僚というのは、常に貪欲に利権をあさり、国利民福をないがしろにしたがる・・・・・・肇国以来、連綿と政治は続いたが、国を富まし、国力を養ったのは政治ではない。全て民草の力だ。民草は政治に頼らず、堂々と生業に精魂を傾け、今日のわが国を造った」

改革を標榜した発足当初の小泉さんは、格好良かった。その一つ構造改革特区の設定。しかし、今のところ、651提案の内124件が認められたにとどまる。これでは、地方からの、あるいは下からの盛り上がりは期待できない。

先日インタービューする機会のあった大前研一氏は「経済の仕組みが変わった以上、古くさい経済理論を振り回す官僚はお引き取りを願うしかない」といっていた。繁栄を取り戻すためには、断固たる若返りが必要だ。蕨はどうだろうか。

 

地蔵の小径(復刊26号)

モスクなど宗教施設を除いて、徹底的に破壊し尽くされたイラク。文明発祥の多くの遺跡は無事だろうか。保護が強調される一方で、破壊が進む。人間の勝手さはあきれるばかりだ。

しかしもっと大事なことは、人類の未来を担う子どもたちが、最大の被害者だと言うこと。戦争の記憶は何時までも残るだろうし、心に受けた傷が消えることはないだろう。教育施設も破壊されたに違いない。

中央公民館の蕨シニアクラブの最新号の会報に山下照夫さんが寄せた「カンボジアに小学校を」の一文を拝読した。「地雷で手足を無くした人々に愛の手を」「公立学校に通学できない子供たちに教育を」のスローガンで活動しているNPO「国際人権ネットワーク」の呼びかけに応えて、なにがしかの寄付をなさったという。

多くの人々の善意で「希望小学校」が完成、300人の児童が教育のチャンスを得たのだ。久しぶりで耳にした明るいニュースだった。世界中の子供たちが平等に教育を受けられる時代は本当に来るのだろうか。

 

地蔵の小径(復刊27号)

イラク戦争はあっけないまま終わった。フセイン政府からの大きな反撃もなく、ましてやアメリカがこだわり続けた大量破壊兵器も一切使われなかった。後には、破壊された国土が残されたばかりか、貴重な人類の遺産が略奪されてしまった。

これらの復興のため、これから日本の出番が始まる。財政は極度に硬直化した中からではあるが、応分の援助は当然のことだろう。しかし、今度の戦争の総費用という点から考えると、直接の戦費と、何処が違うのだろうか。l

戦争の主な目的は、イラクの保持するとされる大量破壊兵器にあった。ブッシュ米大統領は勝利宣言の中で「イラクからの流出を食い止めた」と語ったが、本当に存在していたのだろうか。ウッドワードの「ブッシュの戦争」という本を読むと、石油の利権も絡み、大量破壊兵器は口実に過ぎなかったようだ。

「勝てば官軍」。大義名分は問われてないのかも知れない。ふと、蕨の市長選での各候補の公約が、将来どうなるか、が頭をよぎった。

 

地蔵の小径(復刊28号)

「組み合わせ」という言葉にこだわっている。昔「発明の源泉」という本に、全く違う分野の常識を入れ替えてみることが、新しい発想の源だ、と書かれていたのを思い出した。

何故こだわるかと言えば、選挙戦で池上候補が指摘した「相互補完」によって、新しい発想が生まれる可能性があると考えるからだ。この言葉は本来、国際経済学で使われた。日本の技術と、中国の労働力を組み合わせるとか、相互に足りないところを補えばプラスを生む。国と国は容易に合併出来ないし、無理に強行すれば幾世紀もしこりを残すことになる。が相互補完によって友好関係を深めれば、それが平和をもたらすだろう。

都市間の関係も同じではないか。湘南市や和光市で合併が失敗に終わったのは、財政問題から強制合併させられることへの反発だったろう。この際、蕨市は相互に補完関係のある戸田市との連携をさらに発展させたらどうか。例えばコミュニティバスの共同運行で、市境地区の便宜を図るとか、一歩一歩が将来の統一の足がかりとなるに違いない。

 

地蔵の小径(復刊29号)

厚生労働省の発表によると、65歳以上の高齢者のみか、18歳未満の子供も加わった「高齢者世帯」が700万世帯を超えた。高齢化が急速に進んでいることがはっきりした。この統計で注目すべきは、ひとつには高齢者世帯の平均所得が304万円で、このうち公的年金・恩給が約7割を占めていること。

なおかつ、未婚の子女と同居している高齢者世帯の約4割の家計を高齢者が支えている、という指摘に驚かされた。今日本は不況のどん底にあるが、戦後の繁栄を担ってきた働き蜂は、今高齢者と言われている人々だ。しかもなお、家計を支え続けなければならない、というのは、あまりにも酷ではなかろうか。

一方では少子化が進む。選挙期間中、各候補はそれぞれ高齢化・少子化対策を訴えたが、前号のまちおこし欄で触れた複合型ケアのように、問題をひとつのものとして捉えた意見は少なかった。

労働可能人口が減っていくならば、子供や高齢者の面倒は高齢者に任せて、若い人達をもっと経済の現場へ送り出せないものだろうか。個々の対策をもっともっと組み合わせることで新しい施策が生まれるだろう。

 

地蔵の小径(復刊30号)

8月14日午後4時過ぎ(米東部時間)、ニューヨークをはじめ米国北東部からカナダにかけて大停電が起った。5千万人もの人が影響を被るという史上最大の停電事故であった。この事故は現代の生活で電気が止まったらどんなことになるかを、全世界の人たちにはっきりと判らせてくれた。

アメリカという国は非常に時代遅れの国である。大量生産・大量消費、いわゆる「使い捨て、垂れ流し」でいかに快適生活を実現するかという「20世紀の思想」から抜け出せない。電力、ガソリンの一人当たり消費量は世界一、ゴミの排出量も世界一。世界中の多くの国では、どうしたらゴミや温暖化ガス発生量を減らせるか、どうやったら物を有効に再利用できるかという「21世紀型の思考」を始めているのに、てんで考えていないように見える。大統領は事故後すぐに「これはアメリカに対する警鐘だ」というコメントを出した。さすがに反応が素早い。この「警鐘」を受けて、簡素な暮らしを尊しとするアメリカ人の伝統に立ち返れとでも言うのかと思ったら、大量の電力を送っても壊れない送電線網の再構築を図るのだという。

「アメリカを真似していれば間違いない」と、相変わらず20世紀型思考にしがみついている人が多いこの国はどうする?いちばん困るのは「だから電力自由化などやらぬ方がいい」との方向に進んでしまうことだ。

大澤水紀雄 記

 

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