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わらび新聞

地蔵の小径バックナンバー No.4 一覧に戻る 1 2 3 4 5 6 7 8 9

地蔵の小径(復刊31号)

高度経済成長から一転、未曾有の不況に陥り、それと符節を合わせるように犯罪が多発するようになった。八〇年代までの日本は世界一安全な国と言われていたのだが、今ではそれも昔話。全国的に有名な繁華街などは無いけれど、人情豊かで住みやすい住宅地の広がる蕨。そんな町に通り魔事件まで起る時代である。

どうしてこんなことになったのか。理由はさまざま挙げられている。曰く、高度成長・バブル崩壊の過程で生じた拝金主義と何をやろうが分からなければいいという、いわゆるバレモト主義、ブランド盲信社会が生み出した偏差値教育とそこから落ちこぼれた者の自暴自棄的思考、無原則的な国際化による不法入国者・滞在者の激増等々、数え上げればきりが無い。しかし、それらの「理由」を一つ一つ見詰めると、すべてがどこかでつながっているように見える。

それは、私たち日本人が「自分の事しか考えなくなった」からである。「向こう三軒両隣」意識を古いものとして排斥し、他人事には一切干渉しないが、自分の事にも絶対に口をはさませない。一見極めてすっきりしてはいるが、こういう思想の人たちの集まる社会の隙間に、良くない事が次々に忍び込んで来る。

やはり「町おこし」という、自分の身の回りにもちょっと目を向ける、適度なお節介が必要な時代になっているのではないか。

 

地蔵の小径(復刊32号)

中国東北部のチチハル市を中心に、旧日本軍が遺棄した化学兵器による中毒事件が頻発、大問題になっている。これは由々しきことであり、日本としては何をさておいても解決しなければなるまい。

これからの日本にとって最も大事なのは、中国をはじめアジア諸国と協力して相互の経済発展、地域の安定化をはかることである。拉致問題で膠着している北朝鮮との関係打開も中国、東南アジア諸国の後押しが必要である。しかし、この地域は第二次大戦の日本軍によるツメ跡が至る所に残っている。

毒ガス事件のような問題はこれからもまだ出て来るかも知れない。国民の間には少なからず「うんざり感」があるが、こうしたことを責任持って解決していくことによって、日本という国への信頼度が向上する。アメリカへの義理立てでイラクへ無闇に大金を注ぎ込むことよりも、これはずっと重要である。

 

地蔵の小径(復刊33号)

総選挙が終わった。連立与党が絶対安定多数の議席を確保して、またしばらくは同じような路線を歩むことになる。しかし、与党政権内部では公明党の発言力が一段と増し、自民党はそれを嫌う勢力が強いから不協和音が高まる恐れがある。一方、自由党と合併した民主党が大幅に議席を増やしたから攻勢を一層強めるだろう。来年夏の参院選を控え、政局はかなり混乱しそうである。

それにしても投票率の低さは深刻である。埼玉県は53%台で全国最低。半数近くの人が棄権というのはまさに異常である。すべてを官僚に任せ何もしない政治家が今日の日本社会の閉塞状況を生んだことは明らかなのだが、だからといって「選挙なんかやったって何も変わりゃしない」というのはあまりにも投げやりである。国民がこうした敗北思想に取り憑かれた時、人気取りの大言壮語で大衆の心を掴んでしまう独裁者が現れる。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊34号)

議員というのは住民によって選ばれた地域の代表である。報酬などあてにせず、地域のために力を尽くしたいという高邁な精神の持主だからこそ、人々から尊敬されるのである。諸外国の地方議会の議員報酬はびっくりするほど低い。

日本はどうか。「報酬などあてにしない人」しか議員になれないのでは、議会は富裕層の代表ばかりになる恐れがある。また報酬があまりに低いと収賄など悪事に走る人間が現れないとも限らない。というわけで、議員として活動し、かつ暮らしていけるだけの報酬が得られるようにした。ところが不況で民間は給与引下げになるご時勢に議員報酬は下がらず、いつの間にか高給取りになってしまった。

蕨市では市長以下職員の給与引き下げが実施されることになったが、議員報酬の引下げは棚上げだという。この問題について「尊敬するべき選民」一人ひとりから言い分を聞きたいと思っている市民が多いのではなかろうか。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊35号)

昨年暮に米国でBSE(狂牛病)感染牛が出て以来、牛丼チェーンや焼肉など外食産業に大きな影響が出ている。

食品の安全性という重要な問題なのに、米国政府の対応は日本人の目には極めて鈍感に映る。米国側の言い分を要約すれば、感染牛が1頭出たからといって米国産牛肉が危険だということにはならない、安全性には十分留意するから日本側は早く禁輸処置を解除すべきだというものである。

これに対して日本政府は何となく腰が引けたような物言いである。本来なら米国側が最大のお得意先である日本に真っ先に責任者を派遣し、事情説明や今後の対策を示さねばならないところなのに、何と日本側が中川経済産業相をワシントンに飛ばせたのである。こんな調子ではほとぼりが冷めるのを待って、確たる保証も無いまま「米国産牛肉は安全」という宣言を出して幕を引くのではないかと勘ぐりたくもなる。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊36号)

創業120年の名門企業カネボウが産業再生機構の手を借りて再建への道を歩むことになった。同社は昨年9月中間決算期で5200億円もの負債を抱え、動きが取れなくなっていた。そのため化粧品事業部門を子会社として独立させて再生機構の管理下に置き、同時にカネボウ本体の借金をすべて機構が引き受けることになった。

これによって身軽になったカネボウは事業再編に取り組める。莫大な金を貸した銀行は貸し倒れの痛手をこうむらずに済む。子会社を含め1万4000人の従業員が路頭に迷うこともなさそうだ。

すばらしい妙案のように見えるが、それも無事に再建できてこその話である。もしうまくいかなければ、再生機構がつぎ込む数千億円という国民の血税が泡と消える。カネボウや大手銀行など救済を求める企業のほとんどはバブル期に「やり過ぎ」たのである。「世の中を混乱させないために」という殺し文句で、そういう無責任を税金で尻拭いするというのは、いかがなものであろうか。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊37号)

アテネ五輪の女子マラソン代表に高橋尚子選手が選ばれず、がっかりしたファンは多いだろう。シドニー五輪で堂々優勝し、国民的アイドルになったQちゃん。あのひたむきな走りっぷりと、笑顔がマラトンの丘に現れないのは何とも淋しい。

しかし日本陸上競技連盟の下した今回の決定は正しい。何しろ高橋選手は陸連が指定した代表選考レースで結果を出せなかったのである。もしかしたら本番のアテネでは、選ばれた3人はメダルに届かないかも知れない。高橋尚子を出しておいた方が良かったということになるかも知れない。だが「ルールはルール」という当たり前のことを当たり前のこととして守るのは、金メダルを取ることよりも大切である。

この国では今、国を統べる人が改革を唱え、実際には改革などちっとも進んでいないのに進んでいると強弁している。聞かされる国民の方はああそんなところだろうなと諦めている、そういう閉塞状態に陥っている状況である。たとえスポーツの世界だけでも「言ったことは守る」を実行してくれたことに救いを感じる人は少なくないだろう。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊38号)

3月16日に六本木ヒルズで起こった回転ドアによる幼児死亡事故は痛ましいものだった。同種の事故が十数件も発生していたのに、それを隠して、安全対策をなおざりにしていた森ビルと回転ドア設置業者の責任は極めて重い。

この事故は新聞、テレビで大々的に報道されたが、親の幼児教育責任に触れたものは皆無だった。5、6歳の幼児は極めて活発で、母親が目を離せばとんでもない所まで飛んで行く。駅のホームや電車の中を駆けずり回ったり、エスカレーターの手すりにぶら下がったりという場面にしょっちゅうぶつかる。そういう時、若いお母さんたちの多くは、子供を叱って止めさせたり、手元に引きつけることをしない。酷な言い方だが、今回の事故の裏にはこういうことが潜んでいる気がしてならない。

世の中には絶対安全は無い。今回もまたぞろ役人がしゃしゃり出て、「回転ドア等の安全基準」を作る動きだが、たとえそんなものが出来ても事故を絶滅できるわけはない。「親のしつけ」こそ最も重要な安全対策なのだ。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊39号)

日本国憲法では天皇は国民統合の象徴とされ、国政に関する権能は持たない。国政を切り盛りする最高権力者は内閣総理大臣(首相)である。だから首相の言動は国民の模範となるべきものでなければならず、いやしくも思いつきで行動したり、ましてや嘘をついたり、強弁したりすることがあってはならない。どうして今更こんな分かり切ったことを言うのか。それは、最近の小泉首相の言動に首を傾げたくなるようなことが多すぎるからである。

国民年金の未納問題はその最たるものであった。国民年金改正法案を国会で通して、さてというわけで、実は首相自身も未納だったという。「未納じゃない、未加入だったのだ」という言い方も、とても首相の座にある人間の言葉とは思えない。より衝撃の強い「北朝鮮再訪」を突如打ち上げた後で、付け足しのように述べるやり方もいただけない。

年金が未納だったのか未加入だったのかなどは最早問題ではない。最もいけないのは、国民に決定的ともいえる政治不信と「どうでもいいや」という虚無感を植え付けてしまったことである。これを回復するのは容易なことではない。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊40号)

いよいよ参院選である。といっても国民の関心は異常なほど低い。このままでは7月11日の投票率史上最低を更新ということになるのではないか。

選挙の争点は「年金改革」と「自衛隊の多国籍軍参加」の2つである。年金問題は長い間役人に委せきりで、いいかげんにやって来たから、このままでは破綻確実ということになってしまった。そういうことにならぬよう、国会議員には法律を整備し、監視する責任と義務があるはずなのに、当の議員たちが保険に入るのを忘れていたというありさまである。

イラク進駐の多国籍軍への自衛隊参加は、戦闘行為を禁じている日本国憲法に違反する恐れが十分にある。しかし、統合司令部の指揮は受けず、日本独自の判断で行動するから大丈夫なのだという。果たしてそうか。

参院選はこうした重要問題について国民の意思を示す絶好の機会なのだが、残念ながら他人事のような顔をしている選挙民が多い。本当にこの国はどうなってしまうのだろう。

(寒河柳太郎)

 

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