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わらび新聞

地蔵の小径バックナンバー No.6 一覧に戻る 1 2 3 4 5 6 7 8 9

地蔵の小径(復刊51号)

JRの駅構内で無神経にがなり立てるアナウンスが気になってしかたがない。特に我慢のならないのは、「本日もJR○○駅をご利用下さいまして有難うございます」という文句である。大多数の乗客は、何もその駅を利用したくて利用しているわけではない。自宅なり勤務先なりの最寄り駅だから乗り降りしているに過ぎない。だから、何もいちいち御礼を言われる筋合いはないのである。

JRの駅員も本当は御礼を言うつもりなどさらさらないようで、声の調子にも「ご利用いただいて有難い」と感じている様子は全くうかがえない。ただ書かれているものを読んでいる感じである。「・・・降りる方が先となっております」という言い方も、いかにも投げやりである。降りる人より先に乗り込もうが、オレはどっちでもいいと思うのだが、「降りる方が先」と「なっております」から、そうして下さいよと言わんばかりではないか。

「マニュアル」一辺倒の所産であろう。何事も書かれたものに従うという世界では、常識とか血の通った思い遣りの生きる余地はない。そこに大事故発生の真因がある。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊52号)

世界遺産に登録された和歌山県の熊野古道を歩いて来た。紀伊田辺から入って熊野本宮大社に至る、中辺路(なかへち)という熊野詣の代表ルートである。

急坂を上り下りしながら、鬱蒼たる杉の森や潅木の茂みのある草原を越える約40キロの道程。日ごろ乗物に頼ってばかりいる都会住まいの人間には非常に難業であったが、歩き終えた後の爽快感は何物にも変え難いものがあった。

日本にはまだこういう素晴らしい自然が残っている。都会地のすぐそばにも、その気になって見回してみれば、散策に適した場所がずいぶんあることがわかる。ちょっとした暇を作って、そうした場所に気の合う人たちが連れだって、あるいは子供と一緒に出かけてみる。程よい疲れが、日常生活でたまったくさくさした気分を吹き飛ばしてくれる。

最近、子供たちの異常な犯罪行為がやけに目立つようになった。これも子供たちが精神的に疲れ切っている証拠であろう。万事効率一辺倒の世の中で、生活も勉強もシステム化され、がんじがらめになっている。「自然に還る」ことが何よりの妙薬ではないか。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊53号)

日本の顔ともいうべき大企業による、信じられないような不祥事が相次いでいる。三菱自動車の欠陥車リコール隠し、三菱地所と三菱マテリアルが大阪の豪華マンション敷地の土壌汚染を知りながら口を拭って売り抜けた問題、三井物産がデータをねつ造してディーゼル車浄化装置を売りまくった悪徳行為、明治安田生命が生命保険加入者にいい加減な病歴告知をさせて入らせ、いざ保険支払い段階になったら「告知していなかった」ことを理由に支払い拒否するという詐欺商法。そして道路公団を舞台の談合商法には、石川島播磨重工業、三菱重工業、横川ブリッジなど大手橋梁工事会社がそろい踏みである。

三井、三菱と言えば、明治維新以降の日本の躍進発展を担い、第二次大戦後も高度成長の立役者となった企業グループである。自他共に財界、産業界のリーダーを任じ、時には尊大だという陰口をささやかれたり、殿様商法などと揶揄されることもあったが、少なくとも新聞の社会面を賑わすような、下卑たインチキ商法には無縁だった。

この体たらくも、日本がバブル経済時に溜めたウミを一掃する、最後の大掃除とも言える。落ちるところまで落ちてみるのも、かえって後のためになるだろう。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊54号)

郵政民営化法案が参議院で否決されたため、小泉首相は自民党を大混乱させながら、衆議院解散・総選挙という賭けに出た。民主党はタナボタでチャンスを得たのだが、それを生かし切る実力が備わっていないうから、恐らく「小泉自民党」が勝つことになろう。

しかし、今回の騒動で自民党が受けた傷は極めて深い。公認されずに無所属で立って当選するであろう守旧派の実力者などを中心に、選挙後には野党をも巻き込んで、新党結成の動きが出るかもしれない。また、今回は小泉首相の強引なやり方に渋々従った自民党内部の守旧派が外に出た守旧派を取り込もうと、復党させる動きに出て、それがまた不協和音を立てて分派活動に繋がるかもしれない。

万が一、無党派有権者の多くが投票所に行き、その結果、民主党中心の現野党が勝つということになったらどうなるか。自民党政権以上にあっち向いたりこっち向いたりする人たちの集まりだから、恐らくまたすぐに総選挙という事態を引き起こすだろう。

とにかく日本の政治、社会は当分混乱が続く。我々一般市民が、ほんの少しでもいい、この日本をどういう姿にすべきか自分なりに考えることが、真の再生のスタートになる。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊55号)

衆議院が解散した日に書いた8月号の本欄で述べたように、小泉自民党が予想通りの強さを見せた。小選挙区選挙というのは、どうしても党首に対する人気投票のような形になってしまいがちである。同時にその政党が何をやろうとしているのかを、多くの人々にいかに分かりやすく呈示できるかというのが、最重要ポイントとなる。

その点、「郵政民営化」1本槍の小泉流は実に分かりやすい。選挙期間中の首相の演説を聞いていると、郵政民営化が行なわれればすべてうまくいく、それをやるのが自分だということをしゃべるだけで、後は一切言わない。これはちょっと喩えが穏当ではないかも知れないが、大道香具師の口上とそっくりである。なぜそうなるかを言わず、「そうなるのだ」と思わせるように畳み込んでいく演説技術である。

郵政民営化と言っても、法案は既に骨抜き同然であり、実態はほとんど変わらないのである。ましてこれをテコに財政立直し、地方への権限委譲など、構造改革が進展するとは到底考えられない。しかしそれを是非やってもらわねばならない。それをやらずに年金削減や増税路線に走るようなら、それこそ香具師どころか詐欺師と言われるであろう。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊56号)

インターネットで物を売買する仮想商店街の最大手、楽天が民放TVキー局のTBSの発行済み株式を約15.5%買い集め、筆頭株主に躍り出て、TBSに対し楽天との経営統合を提案した。

TBSと言えば1951年に誕生した関東地区で最初の民放局。全国に28社の系列局を持ち、17年3月期の売上高3017億円、利益98億円の堂々たる老舗TVラジオ会社である。さらにTBSの株式は村上ファンドという投資会社にもかなり抑えられてしまった。「テレビ・ラジオは公共性の高い事業、それが投機対象になったり、経営主体が簡単に変わるのはいかがなものか」という意見もある。これは先頃世の中を騒がせたライブドアによる「フジテレビ支配」問題の時も言われた。

しかし、「公共性」を振りかざしても世論はついて来ない。民放テレビは視聴率競争に躍起になるあまり、愚劣な番組ばかりを垂れ流し、自ら社会の公器であることを忘れてしまっているからである。つまらぬテレビ局がどうなろうと誰も困らない。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊57号)

今年上半期の日本の国際収支は、輸出額から輸入額を引いた貿易収支が4兆9271億円の黒字、海外投資の収益から海外への支払いを引いた所得収支が5兆7224億円の黒字だった。貿易収支が所得収支より低くなったのは初めてのことである。一般にはなじみのない数字なので、あまり話題になっていないが、これは日本という国の体質が変わったことを意味する、大変重要な問題である。

これまでの日本は原料を輸入し、それで作った製品を輸出して稼ぐ、つまり「貿易立国」を国是とする国だった。それが、外国証券投資から上がる利子や、諸外国に作った現地子会社からの配当などによる儲けの方が大きくなったわけである。

経済発展が進んだ国の国際収支はおおむねこういう形になるもので、これ自体は別に悪いとも言えないが、極端に進むと問題が起こる。自国でモノを作らなくなるいわゆる産業の空洞化や、外国に投資した資産の保全をはかるために国際社会での発言力を増やそうと最終的には軍事大国の道を歩み出すかもしれない。それより何より、地味なモノ作りよりは手っ取り早いマネーゲームだという風潮がはびこることが怖い。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊58号)

マンションやホテルの耐震強度偽装事件には憤りを覚える。日本という国はここまで道義がすたれてしまったのかと、暗い気持ちになる。いやしくも人の生命にかかわる事である。それを金に目がくらんで、ごまかすというのは決して許されることではない。

建て主であり売り主であるマンションの販売会社の社長は、国会の参考人質疑で、国から正式に認可された検査機関の審査を受けて通った設計図、強度計算に基づいて建てたものを売ったのが何が悪い、という意味のことを言った。盗人猛々しいとはまさにこれである。確かに強度計算を偽装した建築士は言語道断だし、盲判でそれにお墨付きを与えた検査機関の責任も重大である。しかし、「偽装」が発生する根源には売り主側から陰に陽に「安く上がるようにせよ」との圧力があったのは自明であろう。

こうした手合がはびこらないようにするのが役所の責任なのだが、検査機関には国や地方官庁からの天下りが大勢いる。役人のいい加減さをチェックするのは国会ということになるが、政治家はこれらの手合から献金を受けているという。こうなればもはや司法にしっかりしてもらうより他はない。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊59号)

地球温暖化というのに、何故こんなに寒いのか。気象に詳しい知人の話によると、温暖化で北極の氷が溶け、冷たい水蒸気が上空にたまり巨大な冷気団が生まれる。それが下りて来て日本に覆いかぶさり、北日本に豪雪をもたらし、関東以西も震え上がるということらしい。

温暖化と寒冷化は数百年から数千年という気の長い周期で繰り返される自然現象で、それ自体はしかたがないことだという。しあkし、最近の温暖化はむやみにスピードが早く、これは現代人が石炭、石油などを燃やし過ぎたためである。

何とかしようと世界中の代表が京都に集まって、97年に温暖化の元凶である温室効果ガスの排出を制限する「京都議定書」を取りまとめた。ところが全世界の4分の1を吐き出している米国が、自国の経済発展を阻害するという理由でそっぽを向いた。2番目に大きなガス排出国の中国も、我々は発展途上にあるのだからそんな取り決めには応じられないと言う。こうして地球はどんどん傷んで行く。政府自民党は後継者争いなど矮小な問題にうつつをぬかさず、地球環境保全で世界をリードするくらいの気概をもってほしい。

(寒河柳太郎)

 

地蔵の小径(復刊60号)

冬季オリンピック・トリノ大会の日本チームの情けなさはどうだろう。NHKは連日大騒ぎして「健闘しています」なんてとってつけたようなことを言い、「参加することに意義がある」などと言い古された文句を並べているが、競技は勝つことに意義があるのだ。

オリンピック大会は昔と違って、今や各国のPRの場と化している。だからこそ日本としても、補助金として国の予算(税金)を注ぎ込み、企業からの協賛金も得て、「日本を売り込もう」としているわけである。トリノ大会へも百数十人の選手とそれに負けない数の役員から成る大型チームを編成し、意気揚々と出掛けた。それがこの体たらくである。

企業が拠出した金でやっているのだから、という考えは間違いである。その宣伝費は商品価格に上乗せされ、回り回って一般消費者が負担している。税金は言わずもがなである。

選手は一生懸命やって負けたので、これは実力の差だから責めても仕方がない。問題は「水ぶくれチーム」を送り込んだ背後の組織、さらに雰囲気をあおり立てたNHKを始めとしたマスコミである。そんな弁明をするのか、見守ろうではない。

(寒河柳太郎)

 

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